2016年ごろからボディコンテストの新しい種目として新設されたカテゴリ、「クラシックフィジーク」。
このクラシックフィジークとは一体どんな競技なのか、メンズフィジークやボディビルとの違いを交えながら徹底的に解説していこう。
クラシックフィジークとは?
クラシックフィジークとは、トランクスを履いて体の筋肉美を競うスポーツ。
ボディビルはビルパンツと呼ばれるブーメランパンツを着用するのに対して、クラシックフィジークはトランクスを着用するため、臀部(尻)の筋肉の評価が多少されづらくなる。
また名前が似ているメンズフィジークとは内容がかなり違い、上半身のみを評価するメンズフィジークに対してクラシックフィジークは全身を評価するため、どちらかというとボディビルに近い。
しかし、フィジークと同じように逆三角形な体が必要なため、ボディビルとメンズフィジークを合わせたような競技と言われている。
簡単に説明するとこのような感じになるが、ここからさらに詳しく解説していこう。
ボディビル・メンズフィジークとの違いは?
クラシックフィジークとボディビル・メンズフィジークとの違いはいくつかあるが、大きく5つある。
- コンセプトの違い
- 求められる肉体の違い
- 着用するパンツの違い
- ポージングの違い
- クラス分けの方法の違い(身長別か体重別か)
ひとつひとつ説明していこう。
1, コンセプトの違い
まず知っておいて欲しいことは、それぞれの競技のコンセプトの違いだ。
各競技で特有のコンセプトがあり、選手はそのコンセプトに従って理想の肉体を作り上げている。
クラシックフィジークのコンセプトはボディビルともメンズフィジークとも違うため、ここでしっかりと覚えてほしい。
(※公式のコンセプトがないため、ここで紹介するのはあくまでも”よく言われている”コンセプトだ)
”ボディビル”のコンセプト
”鍛え上げた肉体で人々を魅了する”
ボディビルは、極限まで鍛え上げた肉体を観客や審査員に披露するのがコンセプトだ。
どこかの筋肉をあえて小さくするなどもなく、すべての筋肉を極限まで鍛え、とにかくデカくしなくてはいけない。
”メンズフィジーク”のコンセプト
”海の似合う男”
メンズフィジークは海の似合う男を決める競技としてスタートした。
そのため、いかに海が似合う肉体を作れるかが重要になる。
全身の筋肉をつけるわけではなく、とにかく逆三角形を追い求めていかなくてはいけない。
”クラシックフィジーク”のコンセプト
”ひと昔前のボディビルを復活させる”
クラシックフィジークのコンセプトを知るには、ボディビルについて触れなくてはいけない。
ひと昔前のボディビルはウエストの細い「逆三角形の肉体」が多かったのだが、近年のボディビルでは筋肉量を重要視したが故に、ウエスト周りの太さが目立ってきていた。
そこで昔のウエスト周りが絞れていた頃のボディビルを取り戻そうということで始まったのがクラシックフィジークだと言われている。
もちろん”デカさ”を追い求める今のボディビルも良いのだが、以前の”美しいシェイプ”が評価されていたボディビルが好きなファンも多かったため、クラシックフィジークができたときはかなり盛り上がった。
昔のボディビルと現在のボディビル
この画像を見てわかるように、ボディビルの筋肉量は確かに増えたがその分ウエスト周りが太くなり、スマートさがなくなってしまった。
このカラダを取り戻すための新競技がクラシックフィジークというワケだ。
2, 求められる肉体
クラシックフィジークとボディビル・メンズフィジークでは、求められるカラダがまったく異なる。
ではどんな肉体が求められるのか、簡単に説明していこう。
”ボディビル”で求められる肉体
- 上半身と下半身(全身)の筋肉量
- 全ての筋肉が大きい
大きくこの2つ。
とにかく全身の筋肉がいかに大きく力強いかが重要になる。
どこか一つの筋肉が突出して強いなどはNGで、全てがバランス良く大きいのがベスト。
”メンズフィジーク”で求められる肉体
- 上半身の筋肉量
- 肩幅が広い
- ウエストの細さ(Vシェイプ)
この3つ。
ボディビルと違い、全身の筋肉を見られるわけではなくおもに上半身の筋肉のみが審査対象となる。
体つきもとにかく体が大きければ良いというわけではなく、いかに逆三角形になっているか、いかにプロポーションが良いかで優劣が決まるのが特徴。
そのため、顔の大きさやスタイルの良さなどの先天的な要素も大切だと言われている。
”クラシックフィジーク”で求められる肉体
- 上半身と下半身(全身)の筋肉量
- 肩幅が広い
- ウエストの細さ
- 脚の太さ(Xシェイプ)
この4つ。
上半身と下半身の筋肉量が求められるのは、ボディビルと同じだが、肩幅の広くウエストが細いVシェイプが求められるのはメンズフィジークに似ている。
そのため、クラシックフィジークはボディビルとメンズフィジークが混ざったような競技だとよく言われているのだ。
このように3つの競技は似ているようで全く内容の違う競技となっている。
では実際に各競技の体を比較してみよう。
3つの体を比較!
ご覧のように、ボディビルとクラシックフィジークとメンズフィジークでは体つきが変わる。
左のボディビルはとにかく力強く体が大きい印象があり、
右のメンズフィジークは綺麗な逆三角形で、力強さもあるがスマートさが目立つ。
そして中央のクラシックフィジークは力強さの中にスマートさがあり、上半身が逆三角形で下半身が下に広がっていくような体つきをしている。
このクラシックフィジーク特有の肉体は”Xシェイプ”と呼ばれ、クラシックフィジークで勝つためにはこの体をいかに美しく、かつ力強く生み出せるかで勝敗が決まるのだ。
Xシェイプとは、筋肉量が多く大きい上半身・下半身がウエストに行くにつれて細くなっていく体つきのこと。
この体を手に入れるためには、胸・肩・背中・お尻・太ももなどの筋肉を発達させ、ウエストを細く保つ必要がある。
ウエストを細くしたまま他の部位を大きくするのは難易度が高いと言われているため、この体を作り上げるのはとても大変なのだ。
3, 着用するパンツ
先ほども簡単に説明したが、ボディビルとクラシックフィジークとメンズフィジークでは使用するパンツが違う。
- ボディビル:ビルパンツ(ブーメランパンツ)
- クラシックフィジーク:トランクス
- メンズフィジーク:サーフパンツ
それぞれの競技ではこのようなパンツを着用することになっている。
ではなぜ各競技ごとに着用するパンツが違うのだろうか。
ボディビル:ブーメランパンツ
全身の全ての筋肉の発達度とバランスを比較する。
体全体のシルエットよりもそれぞれの筋肉がいかに発達しているかに重きが置かれている。
お尻周りの細かい筋肉も審査対象に含まれるため、すべての筋肉が見えるようにブーメランパンツになっている。
メンズフィジーク:サーフパンツ
いかに逆三角形の体を作れているのかが重要であり、上半身のみが審査対象になるため下半身の露出が多いパンツが必要ない。
また他の競技に比べると、細かな筋肉よりも全体のシルエットやバランスが大切になるため、サーフパンツのサイズや形、色なども審査対象に含まれると言われている。
クラシックフィジーク:トランクス
全身の全ての筋肉の発達度とバランスを比較する。
Xシェイプと呼ばれる体のスマートさ体全体のシルエットが重要視されるため、ボディビルのような露出度の高いパンツにする必要がない。
4, ポージング
クラシックフィジークのポージングは、ボディビルとほとんど変わらないが、メンズフィジークとは大きく異なっている。
そのため、ここでそれぞれのポージングについて簡単に説明していこう。
ボディビルのポージング
ボディビルのポージングは主に8つある。
- フロントダブルバイセプス
→正面を向き、力こぶ(上腕二頭筋)や体の前面部全体をアピールする。 - バックダブルバイセプス
→後ろ向きになり、力こぶと背中・お尻・もも裏の筋肉をアピールする。 - フロントラットスプレッド
→正面を向き、腰に手を当てて背中の広がりをアピールする。 - バックラッドスプレッド
→後ろを向き、腰に手を当てて背中の広がりをアピールする。 - サイドトライセップス
→横を向き、二の腕(上腕三頭筋)や太もも・胸の筋肉をアピールする。 - モストマスキュラー
→体の前でグッと力を込め、力強さと筋肉量をアピールする。 - アブドミナルアンドサイ
→正面を向き、腹筋・太もも・胸周りの筋肉をアピールする。 - サイドチェスト
→横向きになり、腕の筋肉や胸の筋肉、太ももの筋肉などをアピールする。
この8種類で全身の筋肉を細かい部位まで審査する。
ボディビルはとにかく体の大きさと力強さが求められるため、すべてを細かく審査できるこのポージングになっている。
メンズフィジークのポージング
メンズフィジークのポージングはかなり少なく基本的には2〜3しかない
- フロントポーズ
→正面を向いて、体前面の筋肉と逆三角形をアピールする。 - バックポーズ
→後ろを向いて、体背面の筋肉と逆三角形をアピールする。 - サイドポーズ(団体によっては無い)
→横を向いて体を捻り、ウエストと上半身のギャップ(逆三角形)をアピールする。
ボディビルと違って力強さや筋肉をアピールするポージングがなく、基本的には体のシルエットをアピールするポージングとなる。
これはメンズフィジークが筋肉よりもシルエットやシェイプに重きが置かれているからであり、力強さが求められるボディビルと大きく異なる部分となっている。
クラシックフィジークのポージング
クラシックフィジークのポージングはおもに5つある。
- サイドチェスト
→横向きになり、腕の筋肉や胸の筋肉、太ももの筋肉などをアピールする。 - フロントバイセプス
→正面を向き、力こぶ(上腕二頭筋)や体の前面部全体をアピールする。 - バックダブルバイセプス
→後ろ向きになり、力こぶと背中・お尻・もも裏の筋肉をアピールする。 - アブドミナルアンドサイ
→正面を向き、腹筋・太もも・胸周りの筋肉をアピールする。 - 好きなポージング
→どのポーズでもOKだが、モストマスキュラーだけはNG。
イメージとしては、ボディビルより少しポージングが少ないというところ。
メンズフィジークと似ている部分はほとんどない。
クラシックフィジーク自体は筋肉量とシルエットの両方が重要視されるが、ポージングに関してはボディビルのような力強さをアピールしていく。
ただし「フロントバイセプス」などのクラシックフィジーク特有のポージングは、シルエットをアピールする代表的なポージングのため、ここはボディビルとの大きな差かもしれない(ボディビルは「フロント”ダブル”バイセセプス」)。
実際、5つ目に挙げた好きなポージングでは、「モストマスキュラー」というもっとも筋肉量をアピールできるポージングは禁止されており、筋肉の量よりシルエットやシェイプに重きが置かれていることがわかる。
これはクラシックフィジークの「Xシェイプを目指す」というコンセプトが大きく影響している。
5, クラス分けの方法
クラシックフィジークはクラス分けの方法が他の競技とまったく異なる。
ボディビル:「体重別」
ボディビルのクラス分けは体重別に行われる。
例えば、60kg以下級や65kg以下級などといった分け方だ。
こうしているのは「筋肉がいかに洗練されているのかを審査するため」、である。
体重の上限がないと「ただただ体重を増やして体を大きくしていけば良い」となってしまうが体重の上限を決めることで同じ体重でも、より質感の良い筋肉が作り出される様になる。
これがボディビルの美しさにつながるため、体重制限を設けているのだ。
そしてもうひとつ体重制限を設けている理由が「身長差によるハンディキャップをなくすため」である。
ボディビルでは身長が高い選手が筋肉をつけると迫力が増すため、どうしても背の低い選手にハンデが生まれてしまう。
そのため体重制限をつけて各選手が自分の身長に見合った体重のカテゴリに出場することで、審査に偏りが出ないように保っているのだ。
身長が低いと迫力は多少落ちるが手足が短い分、筋肉が太く見えやすい。
身長の高い選手が低い選手と同じくらい筋肉を太く見せようとしたらとても時間がかかる上、筋トレの時の負荷をどんどん上げていかなくてはならないため怪我のリスクが上がることになるのだ。
そのため、ボディビルでは高すぎる身長はむしろ不利だと言われている。
メンズフィジーク:「身長別」
メンズフィジークが身長別に分けられる理由は、プロポーションのハンデをなくすためだ。
メンズフィジークという競技は、体のシルエットやシェイプが重要視されるため、顔の大きさや脚の長さといったプロポーションがかなり重要になってくる。
もし体重別にしてしまったら、おそらく各階級で勝てるのは身長が高くスタイルの良い選手になってしまうだろう。
それを避けるための身長別なのだ。
メンズフィジークができた頃は、プロポーションなどが重要視されるような競技だった。
しかし年々その審査基準も変わっていき、現在では筋肉量がかなり大切になってきている。
そのため、身長の差によるハンディキャップはなくなってきていると言えるだろう。
実際、身長による階級分けがない大会では、背の低い選手が優勝することも珍しくなくなってきている。
クラシックフィジーク:「身長別&体重制限」
クラシックフィジークは身長別に体重制限がある。
たとえば、身長163~164.9cmの選手は体重74.9kgまでとか、身長175~177.9cmの選手は体重88.9kgまでなど。
こんな形で、クラシックフィジークは身長と体重の両方が見られるのだ。
これは、体全体のシルエット(シェイプ)と筋肉の大きさが両方見られるから両方とも制限がついたと考えるのが妥当だろう。
クラシックフィジークは人気がない?
クラシックフィジークは、まだできて日が浅いためか競技者数が少ないのが現状。
しかし、ボディビルをしていた人がクラシックフィジークに転向したり、メンズフィジークをしていた人がクラシックフィジークに転向したりしているため選手数も増えて、どんどん人気になってきている。
その証拠に海外では今やメンズフィジークを凌ぐほど人気だ。
やはりそれだけクラシックフィジークという競技が面白いということなのだろう。
日本での今後の盛り上がりは?
今現在の日本ではクラシックフィジークはあまり盛り上がってはいない。
というのも、競技をする選手の数が少ないことと、日本で人気の選手のほとんどがメンズフィジークかボディビルに参戦しているからだ。
もし今後クラシックフィジークの中でスター選手が生まれたり、他の競技から人気の選手が移ってくる様なことがあれば人気になるだろうが、今のところその兆候もないため、まだ盛り上がってくることはないだろう。
とはいえ、クラシックフィジークは本当に面白い競技のため、長い目で見れば盛り上がることは間違いない。
文・編集:月刊 MEN’s PHYSIQUE 編集部 (@gekkan_mensphysique)
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