「賞レースは優勝でなければあまり価値はありません」(岡典明選手)
今回は、”2017 JBBF キングオブフィジーク優勝”、”SPORTEC CUP 2019 優勝”など、多くの大会で優勝・入賞している岡典明選手にインタビューを行なった。
彼の強さの所以はどこにあるのか。その真実に迫る。
1987年7月15日生まれ。香川県出身。身長165cm。OFF期の体重は81〜83kgでON期の体重は69kg。
趣味はスニーカー収集。
──2017 JBBF キングオブフィジーク 優勝など今まで数々の素晴らしい成績を残されていますが、この成績についてはどう考えていますか?
基本的に賞レースは優勝でなければあまり価値はありません。
なので、キングオブフィジークとスポルテックカップ以外はあまり人に語れるようなものでもないかなと思っています。
優勝できた2大会に関しては絶対の自信があった上で、狙って獲れたタイトルなのですごく嬉しかったです。
──ステージに立ったときに感じることはどんなことですか?
正直、ステージ上の記憶はあまりないので“覚えていません”という解答になります(笑)。
唯一覚えているのが、初大会のキングでステージに出た瞬間、観客の目が、場の雰囲気が、明らかに変わったなと感じたことですね。
──記憶がないんですね(笑)。ちなみにバックステージではどんなことを感じていますか?
「周りの選手が自分より大きく見える」という、ありがちな感覚に毎回陥っていますよ(笑)。
──大会に出たときは緊張しましたか?
基本、緊張しない大会はありません。
とくに僕の場合、ストレス性胃腸炎を持っているので大会中はずっとお腹が痛くて腹筋を締められません。
ただ2019年のオールジャパンは同郷の選手や四国勢の選手も多く参加していたので、「僕が皆んなを引っ張ろう!」と謎の使命感からそこまで緊張感はなかったです(笑)。
ただ、胃腸炎はちゃんと発症しました(笑)。
──胃潰瘍が出た時はどのように対処していますか?
胃腸炎に関しては、対応のしようがありませんね。
最近気づいたのですが、カーボアップで小麦粉などグルテン多めの食事も原因だったのかな?なんて思うので、自身に合う食事を探すことの重要性は感じています。
表面上の緊張は、仲間がいればサポートに回ったり、仲のいいメンバーと話すことで自然と紛れると思います。
──岡選手は大会に出るときはどんなマインドで出場されますか?
減量初期は「今回はバルクアップ成功したはず!絶対勝てる!」、
減量中期は「インスタ見たらライバルみんなすごい体してるぞ?!うわーヤバいなぁ…」、
大会前は「あーもうちょっとでご飯が食べられる。。。あれとこれとそれと。。。」、
大会中のバックステージは「調子乗って食べすぎた!ピーク外してしまった!みんなデカイなぁ」、
ステージ上は「お腹痛い!お腹痛い!早く出番終わってくれー!!」、
大会後は「あーやっと終わったー!あれ?お腹痛くないぞ?お菓子買い込みに行こーっと!」
ですね(笑)。
──心の声…(笑)。ちなみに大会中に意識していることはありますか?
バックステージでは、とにかく仲間を作って話すことですね。
1人でいるとあれやこれや考え込んでしまうので。
長い時間の中でより疲弊してしまいますし。
あとは常に進行に気を配っています。
ステージ上では、観客ではなくしっかり審査員の方々を見ることですね。
──自分の戦略でうまくハマったなと思ことはありますか?
戦略を立てられるほど知略に長けていないのでいつも場当たり的ですね。
ただスポルテックカップは確実に勝てるという自信があって、youtuberさんが集まりやすそうな舞台で、JBBF主催大会の審査員を務める先生方に名前を売るチャンスだから絶対出るべきだな!と思って出場しました。
見事ハマった気がします(笑)。
──ずばり、勝つために大切なことはなんですか??
正直なところ、フィギュア系の競技は生まれつきの骨格やバランスが1番重要です。
ただ、そういった才能のある子たちと差を埋められるのはポージングでの見せ方だったりします。
なので、自身を客観視する目とポージングを磨くことじゃないでしょうか?
ドーピングして筋肉を人一倍デカくすりゃ勝てるだろっていう短絡的思考の人は当然勝てません。
──大会など間近で見ていて、この人はすごいなと思った方はいらっしゃいますか?
同階級の寺島選手はプロ意識?というか他人に見られることに対する意識が非常に高いなぁと常々感心しますね。
そこはすごく尊敬します。
身体に関しては基本的に他人に憧れることはないんですけど、西崎君は本当に理想のフィジークをしてるなぁと羨ましく思います。
僕が腕と肩に苦手意識がある分余計にそう思うのでしょうね。
田村さんは、大会期間中でもめっちゃ仕事してるし、すごく紳士でデキル男でカッコいいです。
──岡選手が感じている自分のカラダの一番の強みは何ですか?
僕はバランス型かな?と思うので突出した部位はとくにないんですが、個人的には背中が強みかなと思っています。
まあ、背中はフィジークにおいてあまり重要視されないので損ですけどね(笑)。
あとはどの部位もしっかり丸みのある筋肉をしているのも強みでしょうか。
──逆に弱みやもっと強くしたいところはなんですか?
弱点は先で挙げたように、腕と肩、僧帽筋。
あとは絞りですかね?
僕は昔から肩甲骨周りの柔軟性が高く、どうしても軸が体幹の中心に来やすいので、肩や腕、僧帽筋は鍛えにくい部位でした。
──ここからすこし幼少期のお話をさせてください。幼少期はどんな少年でしたか?
今でもそうですが、人見知りだったと思います。
あんまり小さい頃の記憶がないです。ごめんなさい(笑)。
──わかりました(笑)。筋トレとの出会い、そして筋トレにハマったきっかけなんかはありますか?
筋トレの出会い。。。単純に痩せてモテたい一心で始めました(笑)。
なので最初はジョギングに腹筋背筋ばかりしていましたね。
ウェイトトレーニングはスポーツクラブに通っていたときに、ビルダーのスタッフさんに教えてもらったことがきっかけでした。
はじめてのベンチプレスでいきなり60kgくらいの重さを持ち上げられて少し褒められたので、ひょっとしたら才能あるのかな?と思い上がってしましたね(笑)。
そうやってウエイトトレーニングやマシントレーニングを続けていた時が、筋トレ系のyoutuberさんたちが徐々に増え始めた時期でもあってフィジークの創成期とも重なっていました。
結果、うまい具合に全てのタイミングがハマったのだと思います。
──大会に出ようと思ったきっかけやエピソードはありますか?
色々トレーニングを行なっていくうちにスポーツクラブのある会員さんに「このジムで1番綺麗な身体してるねぇ」って褒められたことがありました。
これが「ひょっとしたらフィジークの世界でも通用するんじゃね?」って根拠のない自信を芽生えさせてくれました(笑)。
初大会にキングオブフィジークを選んだのは、当時この大会のチャンピオンが軒並み日本一に輝いていたこと、ここで負けるなら才能ないから続けても仕方ないくらいに思っていました。
──大会を見る側とやる側の一番の違いはなんだと思いますか?
なんでしょうね?
個人的に大会は参加してなんぼだと思うので、見るだけの方々の気持ちはよくわかりません。
僕自身も自分が出ていない大会はあまり興味がないので、友人の応援以外ではほとんどチェックしないです(笑)。
──減量やトレーニングはとても辛いものですが、どうしてここまで情熱を注げるのでしょうか?
僕はコンテストに出るにあたって3ヶ年計画を立てました。
1年目で日本トップのレベルを知ろう、2年目で日本一になり世界のレベルを知ろう、3年目で世界トップ3に入ろうという感じです。
なので計画達成のために頑張りましたね。
2年目まではまだ良かったんですが、3年目のアジア選手権以降はルーティンワークをこなしているだけになってますが…
──筋トレをする前と始めた後で変わったことはありましたか?
身体は大きく変わったと思います。
同じ体脂肪率時期で比較しても+10kg以上体重は増えたと思います。
精神面はトレーニングをするだけではそれほど変わりませんね。
歳をとるごとに考え方が変わることはありますが。
──トレーニングを続けてきたことで得たものなどはありますか?
トレーニングで出会えた仲間たち…などと綺麗事を言っても仕方ないので本音で言うと特に何もありません(笑)。
若干、人前での度胸はついたかもしれません。
── 一般的に、トレーニングをしても何になるのだろうと考えている方も多いかと思いますが、それについてはどう思いますか?
趣味でトレーニングをされている方ですよね?趣味なんだから何になるかならないかという問いは必要ないと思いますよ。
例えば釣りが大好きな人がこのまま釣りを続けて何になるんだとは考えないでしょうし、車好きな人が車雑誌読んでオレはなんのために読んでいるんだ!なんてならないでしょう。
あくまでも趣味の範囲なら深く考えず、好きなことだからやっているでいいんじゃないでしょうか?
──まだ筋トレをしていない一般の方に大会には出ることはオススメしますか?
だれかれ構わずお勧めっていうのはしませんね。
コンテストに出たくてトレーニングしている方はドンドン出ればいいと思いますし、別にエンジョイトレーニーだよって方はそのまま楽しめばいいと思います。
──では筋トレをすることはオススメしますか?
筋トレを無理に勧めることもないですね。
現代人の働き方では自由な時間はかなり限られていますし、世の中にはたくさんの楽しいこともあります。
その中で筋トレを選ばれた方々がいればどうぞマナーを守って楽しんでくださいねと思います。
──減量期はどんなものを食べますか?
今は週5で夜勤をしていますので、夜勤明け1回目の食事、トレーニング前のプロテイン、トレーニング後のプロテイン、2回目の食事、仕事中におにぎり200gとプロテイン、くらいです。
──では増量期はどんなものを食べますか?
基本的に食事回数やメニューは変わりません。
食べる量やお菓子が更に増えるだけです。
──食事を摂る際に気をつけていることはありますか?
僕はかなり大雑把なのでそこまで気にしないです。
ただ、1回のタンパク質摂取量が多すぎると腸内環境が悪くなりがちなので、そこはしっかり小分けにして摂るようにしています。
──付き合いなどで外食をする場合に気をつけていることはありますか?
昔は、気をつけて自分だけ別メニューを食べるなどしましたが、最近は気にせず普通に食べるようにしています。
たった一度の食事で吸収できるカロリーや増える脂肪なんてたかが知れていますから。
──お酒を飲む席ではいつもどうされていますか?
元々お酒は飲めません。アレルギーがあるので最悪死にます(笑)。
──トレーニングのルーティンを教えてください
今現在は5分割です。
「肩、胸、背中、腕、脚」という順番でローテションを回しています。
オフを1日取るか2日取るか、忙しくて3日オフになるかなどでどんどんずれ込んでいくので曜日は特に決めていません。
──トレーニングのセットの組み方や重量&回数、インターバルやセット法についてこだわりがあれば教えてください
あまりこだわりというものはないですね。
その時思いついたことや気まぐれで重量と回数は変化していきます。
ただ、BIG3などのコンパウンド種目に関しては重いの持ってなんぼだろうって考えなので低回数のセットが多いですね。
──トレーニングで最も大切にしていることはなんですか?
毎セット、毎レップ同じ軌道を通ること。
あとはしっかりと起始部に軸(重心)を固定してやることですかね。
──普段から飲んでいるサプリメントを教えてください。
今はプロテイン、マルチビタミン、ZMA、BCAA、EAAですね。
仕事中は長い時間栄養補給が出来ないのでEAA飲んで誤魔化してます。
プロテインはトレーニング前とトレーニング後くらいですね。
イントラにBCAAです。
──トレーニング時に摂る食事やサプリメントを詳しく教えてください
日によってマチマチです。
僕は夜勤もしているので帰宅後朝食から就寝、起きてトレーニングという流れなのですが、だいたい2-3時間の睡眠の後トレーニングに行くのでプロテインをトレーニング前に流し込むことが多いです。
プロテインはインフォームドチョイスのマークがついたものであれば特にメーカーは気にせず飲んでます。
トレーニング中もインフォームドチョイスのマークがついているものならメーカーを気にせず飲むので、購入時最安のものを買ってます。
ちなみに今はみんな大好きextendです(笑)。でも僕はそんな好きじゃないです(笑)。
トレーニング後は残ったBCAAを飲み干してからプロテイン、その1-2時間後に食事ですね。
大体が肉類250g、全卵2つ、玄米200-250gです。
──体のコンディションを整えるために行っていることは何かございますか?
僕は全くストレッチをしないのでコンディションは整ってないですね(笑)。
トレーニング時は寝起きに近いので身体もめちゃくちゃ硬いです。
大好きなホッキョクグマの動画を観るのが1番ですね。
──岡選手は体のコンディションを整えることについてどのようにお考えですか?
常にベストパフォーマンスを発揮するためにはコンディショニングは重要だと思います。
ただ、トレーニング前に30-1時間もずっとローラーでコロコロするのはいかがなものかなと思います。
まあ単に僕が面倒くさがりなだけなんですよ。
──リフレッシュは大切だと思いますか?
大事かそうでないかと言われると大事なんじゃないですかね?
そもそも筋トレ自体がリフレッシュだという人もいますし(大半がそうだと思いますが)。
トレーニングのためにリフレッシュしなきゃ!ってのは本末転倒な気もします。
その場合、筋トレから離れた方がいいですよ。
──岡選手はどのようにリフレッシュされていますか?
ホッキョクグマの動画を観ます。(大事なことなので2度言います)
──そうでしたね(笑)。話は変わりますが、現在の仕事は何ですか?
一つはフリーでトレーナーをしています。
もう一つは秘密です。でも怪しい仕事ではございません(笑)。
──その仕事をする上で、大会に出ることには良い効果はありますか?
トレーナー業には良いフィードバックがあると思います。
名の知れたコンテストで結果が出ると尚良しですね。
──仕事をしながら選手として大会に出ることはとても難易度の高いことだと思いますが、どのようにしてクリアしていますか?
クリア…。ただ休みもらってコンテストに出るだけですね。
出るだけなら誰でも出来るのでそれほど難易度は高くないと思いますよ。
やる気次第でしょう。
──仕事、プライベート、トレーニングに優先順位をつけるとしたらどのようになりますか?
生きていかないといけないので仕事が優先ですね。
その次がトレーニング。
プライベートといってもとくにやることがないので優先度は低めです。
──大会に出ることについて、ご家族や友人、周りの方はどのような反応をされていますか?
特にリアクションはないですね。
入賞しても何もないですよ(笑)。
──今後、フィットネス業界はどのようになっていくと思いますか?
これ以上ブームが加熱して人口爆増ってことにはならないでしょう。
このままのペースが続くんじゃないでしょうか?
あとはウイルス次第でしょう。
トレーナーに関してはもうすでに淘汰が始まっていると思うので、どこかで法的規制(国家資格など制度設計)がかかる可能性もありますね。
──あなたにとって筋トレとは?
ライフワークです。
──最後の質問です。今後の意気込みと目標、最終的にどんな存在になりたいのかを教えてください。
まずは、トレーナーとして一流になりたいですね。あとはアパレルもやりたいです(笑)。
コンテストについては仕事次第で特に決めていません。
元々、目立つことが好きではないので。
最終的には、感謝し感謝される人間でありたいですね。
そのくらいお金も心も余裕が欲しいです(笑)。
「香川県高松市でフリーのパーソナルトレーナーをしています。それなりに入賞実績がありますので、主に選手からの指導依頼が多いですが一般の方ももちろん指導しております。興味がありましたら一度InstagramからDMいただけると幸いです。」(岡典明選手)
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