「自分が良い成績だとは思えない」フィジークの次世代を担う男”毛利智明”

「自分より若く良い成績やすごい体で仕上げてくる選手はたくさんいるんです。そんなすごい選手の方達を間近でみていると、23歳でも決して自分が良い成績だとは思えないんですよね。」(毛利智明選手)

 

今回は23歳という若さにもかかわらず数々の大会で上位入賞を果たしている若きトップフィジーカー、”毛利智明選手”にインタビューを行なった。
彼の強さの所以はなんなのか。その裏側に迫る。

 


 

──23歳という若さでマッスルゲート、ゴールドジムジャパンカップと良い成績を残していますが、この成績についてはどう思っていますか?

自分の年齢は確かに若い方かもしれません。

ですが、同年代にはクラシックフィジークチャンピオンの五味原選手やメンズフィジークのオーバーオールチャンピオンの穴見選手がいます。

他にも自分より若く良い成績やすごい体で仕上げてくる選手はたくさんいるんです。

そんなすごい選手の方達を間近でみていると、23歳でも決して自分が良い成績だとは思えないんですよね。

今は彼らのようなすごい選手に1日でも早く並びたいと思ってます。

 

──様々な大会で実際にステージに立っていると思いますが、緊張はしますか?

ステージ上ではライティングが強くて客席側の様子はほとんど見えない状態だったので、緊張することはなかったですね。意外と。

それとステージに立っているときは周りの選手は見ていません。
審査員の方達に笑顔でアピールすることに必死でそれどころではないんですよね。

周りの選手と自分との比較は大会後の写真や動画等で初めてしました。
ほとんどは「バルクが足りないけど、ポージングや表情等のステージングはかなりうまくできている」というように感じましたね。

 

──大会中、ステージ上に立った時に意識していることはなんですか?

とにかく笑顔で審査員にアピールすることです。

体はもちろんフレックスして力が入っているのですが、顔もカチカチになる程、笑顔に気をつけています。

ステージに上がってしばらくすると唇がピクピクと引きつってきて、変な表情をしているんじゃないかと思いながらも終始笑顔は絶やさないようにしていますね…(笑)。

あとはポージングの細かいところにも意識してます。
特にサイドポーズの時の指先が、ばらっとしがちなのでピシッと揃うように心がけています。

 

──大会など間近で見ていて、この人はすごいなと思った方はいらっしゃいますか?

クラシックフィジークの五味原領選手です。

筋肉の充実度、絞り、ポージング、全てにおいて「すごい」と思いました。

クラシックフィジークにはバキュームポーズという両手を頭の後ろで組み腹を凹ますポーズがあります。

五味原選手のバキュームポーズを見るまでは、バキュームポーズのかっこよさが分からず、なんでバキュームポーズが規定ポーズで重要視されているのだろうと思っていたのですが、彼のバキュームを見て「これがバキュームか」と衝撃を受けました。
彼のおかげでクラシックフィジークというカテゴリーがより好きになりましたね。

 

──自分で感じている自分のカラダの一番の強み(ストロングポイント)は何ですか?

一番の強みはポージングだと感じています。

実際バックステージで他の選手と比べると自分はバルクがないです。

でも毎日練習したポージングがステージ上でしっかり決まれば、筋肉量が少なくてもかなりカバーできるような実感があるんです。

この強みはもっと伸ばせると考えていて、次の大会に向けてポージングのパーソナルを受けようとも考えています。
楽しみです。

 

──自分のカラダの弱み(ウィークポイント)はなんですか?

一番の弱みは肩の丸みです。

メンズフィジークでは特に丸い肩が必要になると思うのですが自分は肩の丸みがほとんどありません。

上腕がそれなりに発達している分、余計に肩が小さく見えてしまい、メンズフィジークのポージングを取ったときに肩の小ささが露骨に出ます。
なので肩に関しては使用重量を増やしてみたり頻度を増やしてみたりと、いろんな角度からアプローチしてます。
肩は今後の課題ですね。

 

 

──毛利選手は筋肉のサイズ大きく、バランスがとても良いですが、若くしてそれを作り出す秘訣はどんなところにありますか?

コンパウンド種目と可動域を重要視していることかなと思います。

どの部位もコンパウンド種目から入り、可動域をしっかり確保しつつ使用重量を伸ばすようにしてます。

プラス、まんべんなく全身を鍛えることでバランスよく発達しているのかなと思いますね。

 

──上の質問と少し重なりますが、若い選手が毛利選手のように大会上位に食い込んでいくためには何が最も重要だと考えていますか?

やはり何度も大会に出ることだと思います。

大会に出るまで絞ることで初めて自分の弱点や本当の筋肉のサイズなどがわかりますから。

食事だとかトレーニングとかに関してもより真剣に考える様になりますしね。

でもそれだけじゃなく、他の選手との出会いがモチベーションにつながったりもするので、大会に出ることで体作りがどんどん加速するような気がしますね。

少しでも出てみたいと思ったら是非挑戦してみてほしいです。

 

──ちなみに幼少期の毛利選手はどんな少年でしたか?

断片的にしか覚えていませんが、外で遊び回る活発な少年だったと思います。
いくつも秘密基地を作ったり、何の目的もなく長距離を走ったり、魚釣りをしたり。

あとは家の中ではゲームをよくしていました。

他には剣道、和太鼓を習っていましたね。

そのおかげか握力や腕相撲はクラスでもほとんど負けませんでしたよ。
負けず嫌いな性格で友達が自分より字が綺麗なのが悔しくて習字教室にも通わせてもらったなんてこともありました。

勉強も運動も負けず嫌いだった記憶があります。

 

──それからどのように筋トレに出会い、ハマっていったのですか?

学生時代、バスケ部に入っていたのですが、ある日の練習でベンチプレスがをやったんです。
ちなみにそれが初めてのベンチプレスだったんですけど。

その時は30kgで腕がプルプルになり、マックスでも40kgしか上がりませんでした。
ですが顧問の先生には「男子は70kg、女子は50kgできるように頑張れ」と言われたので、部活が終わってからもベンチをする様になったんです。

それから数ヶ月ほどで70kgをクリアしたんですよ。
同学年では一番成長が早くて、個人的にはそれがものすごく嬉しくて。

バスケ部を引退した後、インターンで上海の設計事務所に1ヶ月行ったんですけど、そこで宿泊していたゲストハウスで、毎日200回腕立てをしている上海のマッチョ青年に出会ったんです。
その青年と仲良くなって、感化され、帰国後自分の腕立て300回チャレンジがはじまりました。

その日から筋トレを毎日する様になりましたね。
筋トレを始めて2ヶ月目には、同じ高専の寮の後輩に教えてもらいながら、フリーウエイトでの筋トレへと少しずつシフトしていきました。

その後、大学3年次編入した先で、当時npcjの大会に出場していた腰さんと出会い、「お前もせっかく筋トレしてるなら大会出ればいいじゃん」と言われて、大会を目指す生活へとシフトしたんです。

そうするとみるみる体が成長していき、その結果、どんどん筋トレにハマっていきました。

大会に出始めた最初の年はJBBFの大会に3つ出て、ことごとく予選敗退し、悔しい思いをしました。
でも2年目である昨年はマッスルゲートで入賞することができ、ようやく大会に出る楽しさに目覚めてきたんです。

今思い返してみると、小さい頃からドラゴンボールやジョジョに出てくる筋肉隆々の体に憧れて、父が使っていたダンベルでダンベルカールとかしてたんですよね。

なので、もしかしたら筋トレには”ハマるべくしてハマった”のかもしれませんね(笑)。

 

──筋トレをする前と始めた後で変わったことはありましたか?

色々変わったことはあるのですが、一番は食生活が変わったなと思います。

昔はインスタントラーメン、菓子パン、お酒など何も気にせず食べていました。
友達を誘って外食に行くこともあったり、たくさん料理を作ってみんなで食べたりすることもよくありましたし。

ですが筋トレを始めて食事に気を使いだしてからは、ほとんどクリーンなものしか食べなくなりましたね。

食事に誘われても行かないこともよくあり、そのうち誘われなくなったり…(笑)。
お酒もほとんど飲まなくなり、社交性というか人付き合いみたいは悪くなったように思います。

気づいたら周りはマッチョだらけになっていました。
類は友を呼ぶんだなと実感しています(笑)。

 

──基本的な食事を教えてください(とある1日の食事のことでも問題ありません)
増量期の食事
  • 朝:卵2個、オーバーナイトオーツ80g(ナッツ、プロテイン、低脂肪乳、ブルーベリー)
  • トレ中:カーボドリンク
  • トレ後:プロテイン30g
  • 昼:ご飯1合、鯖缶1個もしくは魚を焼く
  • 夕:さつまいも200g、鶏胸肉150g
  • 夜:鶏胸肉150g、野菜てきとう
減量期の食事

減量期は1日を通してこのくらいの量になります。

  • ご飯は1.5合〜2合ほど
  • さつまいも200gほど
  • 卵2個
  • 鯖缶1個
  • 鶏胸肉300g
  • ナッツ20g

減量期は野菜をたくさん入れて、満足度をあげています。

 

──食事を摂る際に気をつけていることはありますか?

増量中はなるべく食べすぎないように気をつけています。

あまり早いスピードでの体重増加のほとんどは水分と体脂肪だと考えているので、月1キロ増えるくらいに心がけていますね。

でも増量中は割と外食で好きなものも食べますよ。
週に1〜2回ほどなら少々脂質の多いものでも食べます。

減量中に気をつけていることは、決めたカロリー、食事を守ることです。
とはいえ、厳しくしすぎるとその反動も大きくなるので週に1食ほどはガツンと寿司を食べたりもします。

食事のボリュームを出すために栄養素の密度が薄い食べ物、主に野菜などを積極的に取り入れてますよ。

あとは買い物で買いすぎない様に心がけていますね。
やっぱり、家に食材がたくさんあるとついつい食べたくなってしまうので、必要最低限のギリギリの食材を週に1、2回買いに行くようにしてます。

 

──付き合いなどで外食をする場合に気をつけていることはありますか?

増量期ではあまり気にしませんが、減量中だったらなるべく鶏肉か牛の赤身肉、もしくは魚があるお店を選びますね。
最近ではコロナ禍で付き合いでの外食をすることもなく、非常に生きやすい時代になったなと感じています(笑)。

 

──お酒を飲む席ではいつもどうされていますか?

コンテストから1ヶ月以上空いていたら、最初の一杯くらいなら飲みます。
ビールは大好きなので、いい息抜きになりますし。

とはいえまだ学生でお酒を飲む席はほとんどないので問題なしです。

 

──トレーニングのルーティンを教えてください

今は3分割で回しています。
PPL法です。

  • 月曜:「プッシュデイ」 胸、肩フロント、肩サイド、三頭
  • 火曜:「プルデイ」 背中、肩リア、二頭、僧帽
  • 水曜:「レッグデイ」 ハムケツ、前腕、腹筋
  • 木曜:「プッシュデイ」胸、肩フロント、肩サイド、三頭
  • 金曜:「プルデイ」背中、肩リア、二頭、僧帽
  • 土曜:「レッグデイ」脚フロント、カーフ、腹筋
  • 日曜:「オフ」

っていう感じですね。

 

──トレーニングのセットの組み方や重量&回数、インターバルやセット法についてこだわりがあれば教えてください

セットの組み方として大体最初に3〜6RMの高重量でできる種目を持ってきて、その後に6〜10RMほどを行なっています。

セット数は今は5セットずつですかね。
なるべく一つの種目の上達を狙い5セットで少ない種目数にしてます。

セット法はほぼ全てストレートセットでインターバルはコンパウンド種目で2〜3分、アイソレート種目で1〜2分くらいです。

ストレートセットにしているのはそれぞれのセットで高いパフォーマンスを出すために筋肉をヘロヘロになせないためって言うのが大きな理由です。

インターバルも次のセットがしっかり行えるように長めに取っています。

 

──トレーニングで最も大切にしていることはなんですか?

可動域とフォームを変えずに使用重量を伸ばすことです。

使用重量が上がれば筋肉が大きく強くなると考えてるので。

やっぱりトップ選手を見ていると、扱う重量が重く使用重量に見合った筋肉を搭載しているような感じなんですよね。
それもあって、使用重量を上げることを大切にしています。

「使用重量が上がったけどフォームも可動域も変わっていた」っていうことがたまにありますが、それだと本当に筋肉が成長しているのかチーティングテクニックが上がったのかが分からないので、なるべく可動域とフォームを変えずにどれだけ重さを伸ばせるかに集中してますね。

 

──普段から飲んでいるサプリメントを教えてください。

プロテイン、EAA、グルタミン、クレアチン、マルトデキストリンです。

 

──トレーニング前・中・後の食事とサプリメントはどんなものを摂取しているんですか?

トレーニング2時間前に卵2個、オーバーナイトオーツ80g(ナッツ、プロテイン、低脂肪乳、ブルーベリー)をよく食べます。

プレワークアウトは稀に飲むって感じですかね。
筋トレ30分前に水に溶かしてぐいっと飲んでますよ。

トレ中のイントラワークアウトはマイプロのEAA15gにマルトデキストリン30gと塩をてきとうに入れたものを飲んでます。

トレ後はプロテイン30gにグルタミン5g、クレアチン5gを混ぜたものです。

それから30分後ほどに家に着くのでご飯1合とサパ缶を炊飯器で炊き込んだものを食べています。

 

──体のコンディションを整えるために行っていることは何かございますか?

最近はトレーニング前後にストレッチポールで体をほぐしています。
主に使った部位の血液を全身に回して、その後の栄養が行き渡りやすいようにと願って行なっていますね。

 

──それをやるとどんな効果がありますか?

個人的には疲労が少しだけ弱くなる様な気がしています。

 

──体のコンディションを整えることについてどのようにお考えですか?

時間があればやっているくらいですね…。

現役選手として30代、40代と続けて行きたいので本当は骨盤の歪みや姿勢なども直したいなと考えているんですけど…。

今後は今よりもコンディションを整えることを大切にしたいなとは思っています。

 

──現在の仕事は何ですか?

本業は学生なのですが、Youtubeを仕事の様に取り組んでいます。

主に自宅で企画、撮影、編集としています。

発信内容としては自分が筋トレ始めたての頃に知りたかった情報を発信しています。

インスタグラム等できた質問や相談に答える形で動画を出すこともあります。筋トレ初心者さんの悩みが解決できたらいいなと考えています。

 

──その仕事をする上で、大会に出ることにはどんな影響・効果ありますか?

自分の体で色々実験することでより説得力が増しますよね。

大会を目指しつつもそこで得た知見等をYoutubeで発信することが、そのまま仕事にもつながっている様な気もしていますし!

 

 

──仕事に対する考え方などあれば教えてください

一人でも多くの人の体づくりに貢献できたり、大会に出ようと思っている人の後押しになればいいなと考えています。
まだまだ筋トレをしている人はマイナーなので、筋トレの良さだったりをもう少し普及できればなと思ってます。

 

──最後の質問です。今後の意気込みと目標、最終的にどんな存在になりたいですか?

まずは今年出場する大会で1位をとれるよう頑張ります。
カテゴリーは色々出るのでその分チャンスもあると思ってます。

またYouTubeは2021年内に5万人規模のチャンネルまで育てることが目標です。

最終的には若いトレーニーが目標とするような体、人格になれるように努力したいと思います。

 


 

・YouTube

「筋トレを始めて1〜3年くらいの人の悩みや疑問に答えれるようなコンテンツを発信しています。なるべく専門用語は使わず、一般の方でも理解できるように工夫していますのでぜひ一度チャンネルに遊びにきてみて下さい。毎週火曜と金曜の夜7時に動画をアップしています。」(毛利智明選手)

https://www.youtube.com/channel/UCXSIeEdpj9DWFyXvvav7ucg

 

文・編集:月刊 MEN’s PHYSIQUE 編集部 (@gekkan_mensphysique)

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