今回は2020 NPCJ Japan Classicにてメンズフィジークノービスチャレンジ-175、メンズアスリートモデルトールマンの2部門で王者となった谷井選手にインタビューを行なった。
「背中で語り、態度で示し、慕われるような、そんな人間になりたい」(谷井悟選手)
──2020 NPCJ Japan Classic メンズフィジークノービスチャレンジ-175 1位、 メンズアスリートモデルトールマン 1位、という結果についてどう思っていますか?
正直、物足りないですね。
レベル別上から順にオープン、ノービス、ノービスチャレンジとあるのですが、「もしノービスやオープンに出場していたら…」と思ってしまう自分がいます。
しかし、去年はノービスチャレンジで4位だったことを考えると、この1年での成長的には上出来だったと思っています。
──この大会で実際にステージに立ってみて、どのようなことを感じましたか?
ステージに立って最初に見えたのはジャッジのフィルモアさんと光太郎さんでした。
お2人ともスポーツモデルで実績を残している方ですので、今回の審査でも脚が評価されるんじゃないかと思ったんですよ。
脚は私の強みなので、これはチャンスだと思いましたね。
実際に脚が評価されたかどうかはわかりませんが、これが精神的にポジティブに働いたのは大きかったと思います。
バックステージではみんなパンプアップに必死すぎじゃないかと感じました。
パンプアップは魔法じゃないですし、もともと持っている筋量以上には肥大しないので、個人的にはそこまで大きな差は出ないと考えてます。
なので、私はバックステージではポージングの確認を中心に行っていました。
これは大正解だったと思います。とくに初心者ほどその方が採点への影響は高いと思いましたね。
──ノービスチャレンジもメンズアスリートモデルトールマンも審査員満場一致の1位でしたが、大会中、谷井選手は「これは勝てるな。」と思うことはありましたか?
比較競技なので、自分がオープンで優勝できるレベルまで完璧に仕上げていても運悪く同じカテゴリにオリンピアレベルの人が出てしまえば負けてしまうのがこの競技の難しいところだと思うんですよ。
そういう意味では、比較競技であっても他人と比較することに対しては全く意味はないと思っています。
だから私は、勝ち負けの相手は他の選手ではなく常に自分に向けていました。
そういう意味では去年の自分に対して「これは勝ったな」と思っていましたよ。
──大会など間近で見ていて、この人はすごいなと思った方はいらっしゃいますか?(注目している選手でも構いません)
菊田 一輝選手です。+175のクラスで優勝された選手ですね。
後から動画で見たところ、身体だけを見た時は私の方が上位に立てる自信はありましたが、表情やポージングによる表現力が圧巻でステージングが本当に上手だったので、総合力では私の方が劣っていたと思います。
若い選手ですが、「こんなやり方もあるのか」と勉強させていただきました。
──自分で感じている自分のカラダの一番の強み(ストロングポイント)は何ですか?(ポージングや絞り、カラーリングなどでもOKです)
先ほども言いましたが、やはり脚ですね。
フィジークでは全く活かせないのが難点です。
ただ今回絞ってみて思ったのは、個人的に苦手だった胸も弱点ではなくなっていたこと、ミッドセクション(特に腹直筋)もかなり強みになっていたことですね。
このまま肩や背中も鍛えてバランスを強みにしていきたいと思っています。
──自分のカラダの弱み(ウィークポイント)はなんですか?(ポージングや絞り、カラーリングなどでもOKです)
背中です。厚みが全然でなくて苦労しています。
絞りに関してもまだまだオープンで通用するものではないと思っています。
──大会で勝てた理由というのはどういうところにありますか??
ずばり、フィジーク愛です(笑)。
これが勝てた秘訣かどうかはわかりませんが、気になったところはとことん突き詰めたくなる性格なので、筋肉の名前は英語名や動作まで調べたりしますね。
”マシンのメーカー”や”筋肉が成長するメカニズム”といった、筋肉に関連したところはもちろん調べて学びまくるのですが、ステージ映えするためにはどうすればいいのかといった観点で言うと、歯のホワイトニングをやってみたりサーフパンツのメーカーも調べたりしてましたよ。(笑)
ポージングもジャッジの目線にスマホをおいて何度も録画して微調整しましたし、同じジムの仲間にもいろんな人にいろんな角度からチェックしてもらいました。
マイナーなサプリメントを揃えて満足しているだけでは全然足りないと思います。
──上の質問と重なりますが、カラダを作り上げる上で最も重要なものは何だと考えていますか?
結局のところはトレーニングと食事に落ち着くと思います。
筋肥大に関しては栄養を取って、高重量を扱うこと。
人によってはフォームが大事だと言いますし、それは間違いではないと思います。
でも私は高重量を扱うことが何よりも大事だと思っています。
絞りに関してはマクロ管理ですね。私の場合燃費がいいのか筋量が足りないのか、カロリーはかなり制限していました。大体900~1500kcalです。
あと意外と意識されないのが水ですね。
私の場合は1日8L~10L飲むようにしていました。
いずれにしても、人によって最適な方法は異なると思いますので自分に合った調整を見つけることが大事だと思います。
──ここから少し以前の谷井さんについてのお話を伺いたいと思います。幼少期の谷井さんはどんな少年でしたか?
昔はかなり太っていました。小学生の時にお医者さんにはこのまま太り続けると命が危ないとまで言われていましたね。
──そんなに太っていたんですか?
はい。中学生の時にバスケを始めてからマシにはなりましたが、それでも太っている方ではあったと思います。
この時のコンプレックスがあったからこそボディメイクを始めるキッカケになったと思っています。
──それからどのように筋トレに出会い、ハマっていったんですか?
2014年頃に筋トレに出会いました。
実は精神的に落ち込んでいるときがあって、ちょうどそのころ知人が筋トレを始めていて「身体的にもいいけど、精神的にもいいから」という理由で勧められて私も始めることにしました。
「健全な精神は健全な肉体に宿る」って言いますからね。(笑)
ちょうどお盆だったので実家にあったワンダーコアを1週間毎日続けることから始めました。
そのあと、家トレのバリエーションを増やしていったのですが、半年ぐらい経つと物足りなくなってきたのでジムデビューしましたね。
ベンチプレス40kg上がって感動していたのも、今となっては懐かしい記憶です。(笑)
そんな中ある時東京オリンピックが開催されることが決定しました。
あのオリンピックが東京で開催されるという事実に感化され、自分も出たいという思いが湧いてきました。
ですが当然一般人には別世界の話ですし、そもそも運動自体あまり得意ではなかったので、出たいとは思いつつもしばらくは何も行動を起こさずという感じでした。
そこからしばらく経ち、フィットネスブームがやってきて皆さんご存知のKanekin Fitnessチャンネルが流行りました。
カネキンさんの影響で筋トレを始めた人たち、それも私よりも後に筋トレを始めた人たちが大会に出場した話というを聞くうちに、自分も筋トレで何かしらの成果を出せないだろうかと考えるようになりました。
私がフィジークを知ったのもこの頃ですね。
そして東京オリンピックが開催される2020年の年、ついにフィジークで大会出場することを決心しました。
2019年は大会を知る目的で、2020年は結果を残す目的で出場しようと計画していたのですが、実際、その計画通りに結果を残すことができたと思っています。
──筋トレをする前と始めた後で変わったことはありましたか?
見た目は多少変わりましたが、筋トレを始めてからというよりは食事を意識し始めてからだと思いますね。大きく変わったのは。
──その意識しているという食事ですが、現在はどのようなものを食べているのですか?
増量期は基本的には好きなものを食べていますが、脂質は取り過ぎないよう気を付けています。
本当は減量期の食事を、量を増やして食べるのが最善だと思うんですけど。(笑)
減量期については、以下のようになります。
・糖質源
さつまいも、甘栗、ギリシャヨーグルト、スープ春雨、マルトデキストリン
・たんぱく源
鶏むね肉、ギリシャヨーグルト、ブロッコリー、卵白、魚
・脂質源
卵黄、魚
・その他
糖質0麺、SUNAOアイス、糖質オフプリン、観点ゼリー、ブラックコーヒー
こんな感じで調整しています。その他はどうしても何か食べたくなった時にこれを食べるというもので、普段から食べているわけではありません。
ちなみにプロテインは減量期には摂らないようにしています。
──食事を摂る際に気をつけていることはありますか?
減量期は気を付けていることしかないですね(笑)
まず最も大事なのは総カロリー。
多い日でも1500kcalに収めること。これが最優先になります。
そしてトレーニング強度を落とさないためにも炭水化物は少なくとも120g(=480kcal)は摂取する。
脂質は体重×0.1~0.2gは摂取する。タンパク質は少なくとも100g、多くとも120gにする、等…
一番難しかったのはトレーニング中にマルトデキストリンを入れるとその他に摂れるカロリーが一気に減ってしまい、朝昼で帳尻を合わせなきゃいけなかったことですね。
あれほほんとに苦労しました。(笑)
──付き合いなどで外食をする場合に気をつけていることはありますか?
増量期は気にしていません(笑)。
飲み過ぎて翌日トレーニングできない事態は避けたいと思いつつ結局飲んでしまいます(笑)。
逆に減量期はそういったことを気を付けるのが嫌なので、お誘いは全部断わるようにしています。
例え大事な人や上司からの誘いであっても断ります。
なのでオフでは浴びるように飲み、減量がはじまると全く飲まないですね。何事もメリハリが大事です。
──トレーニングのルーティンを教えてください。
曜日で分けてしまうとその日どうしてもいけなくなってしまった時の振り直しが煩わしいので基本的には順番で分けています。
『背中→胸→肩→腕』
ただし、全部筋肉痛のときは脚を入れたり、マシンが埋まっているときには腹筋を入れたり、弱点部位をもう一回やってみたり、とベースは持ちつつ臨機応変に対応できるように組んでいます。
合トレをよくする人や急な予定が入りがちな人にはこのやり方はお勧めです。
──トレーニングのセットの組み方や重量&回数、インターバルやセット法についてこだわりなどありますか?
これは私も勉強中ですね。
最適解を得られてはいないのですが、簡単に説明しますと以下の通りです。
・背中
収縮種目中心、デッドリフトから始める
・胸
とにかく高重量中心。最後にストレッチ種目で締める。
・肩
前/中/後で部位を細かく分け、強化したいところから始める。前は高重量重視。
・腕
スーパーセットで短時間に一気に攻める。上腕筋を狙うのも忘れない。
・脚
四頭筋を細かく分ける。高重量スクワットから始める。ハムストリング等の体の裏側は収縮ポジで停止を5秒程度入れる。
・腹筋
上/下/中/腹斜で分ける。アブローラー中心。
※腕以外はインターバルを長めにとっています。3~5分ぐらい。
──トレーニングで最も大切にしていることはなんですか?
重量を扱うこと、ストレッチ種目を入れることですかね。
背中やハムだと収縮を強く意識するようにしています。
──普段から飲んでいるサプリメントを教えてください。
マルトデキストリン、BCAA、クレアチン、カフェインぐらいでしょうか。
サプリは飲み忘れることが多々あります…(笑)。
──トレーニング前の食事とサプリメントはどんなものを摂りますか??
トレーニング前はあまり意識してサプリを取ることはありません。
あまりに空腹の場合はさつまいもを食べるぐらいです。
──トレーニング中のサプリメントはどうでしょうか?
トレ中は、2Lの水にEFX社のカーボリン、Extend社のBCAA、MuscleTech社のクレアチンを混ぜたものを入れて飲んでいます。
イントラのカーボは本当におすすめですが、カーボリンは高いので初心者の方はMyprotein社のマルトデキストリンでも問題ないので試してもらいたいです。
──トレーニング後はいかがですか?
トレーニング後も特に意識してサプリを取ることはないですね。
お腹がすいていたらタンパク質中心に軽めに取ることはありますが。でも、その程度ですね。
──なるほど。ここから少し現在の谷井さんのお仕事について聞かせてください。
今はIT系の会社に勤めており、現在はITインフラの設計構築が主な業務で要件定義から設計、開発、テストまで幅広く担当しています。以前はアプリケーションの開発も行っていたので割と何でも屋みたいなところはあります。
──仕事をする上で、大会に出ることにはどんな影響・効果ありますか?
上位プロセスの実践に役立っていると思います。
仕事にも様々な形態があるとは思いますが、私の場合はプロジェクト型の業務にマネージャーという立ち位置で携わることが多いです。
この仕事をする上では、まずはゴールを定義し、要件を定義し、進捗となる指標を定め、スケジュールを組み、組織を編成するという計画・流れなのですが、これと大会当日までの計画・流れがかなり一致しているように感じます。
仕事においてはかなり重要なポジションなので全てを一任されることは現時点ではありませんが、大会出場への道のりを経て、仕事に還元される部分も少なからずあったと実感しています。
──仕事に対する考え方などあれば教えてください
仕事はお金と割り切っています。だからこそお金をもらっている以上中途半端なことはすべきではないとも思っています。私の場合は技術が求められる職業のため、既存技術を磨くことと最新の技術を身につけられることが求められています。そのために常日頃から疑問点に対する情報収集は怠らないようにしています。
これはトレーニングに対しても活きてきていると感じることが多々ありますね。
──最後の質問です。今後の意気込みと目標、最終的にどんな存在になりたいのかを教えてください。
私はかなり口下手な人間なので、背中で語り、態度で示し、慕われるような、そんな人間になりたいと思ってます。
そのための第一歩として現在はノービス優勝とオープンクラス優勝を目指していきます。
・Youtube
「サラリーマンとしてトレーニングに割ける時間が限られた中でどのようにして大会に挑んでいくかを記録し、世の中の諦めを除去したいと思い始めました。時間がなくてもできることはあるということを証明したいと思っています。」(谷井悟選手)
https://www.youtube.com/c/KogoroFitness
「Youtube では載せきれなかったトレーニング風景などを動画で載せていきつつ、食事など、単発写真も並行してあげていきたいと考えています。」(谷井悟選手)
https://www.instagram.com/fitnesskgr
「YouTubeやInstagramに投稿するまでもない、ふとした考えや思い付きを発信しています。」(谷井悟選手)
https://twitter.com/FitnessKogoro
文・編集:月刊 MEN’s PHYSIQUE 編集部 (@gekkan_mensphysique)
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